以下にいくつかの留意点を述べる.
(1) 地すべり地形の判読では,斜面の上方に谷側に凹の等高線(へこみ)があ
り,下方に谷側に凸の等高線(押し出し)があって対になっている地形を拾
い出せば,ほぼ間違いなく地すべり地形を拾い出せる.
すなわち,谷側に凹の等高線は地すべりの滑落崖であることが多く,谷側に凸の等高線は地すべり移動土塊の末端を示していることが多い.この場合,谷側に凹の等高線がその上下斜面に比べ混んでいれば滑落崖の可能性が非常に高い.このような
目で注意深く見ると,幅50m程度までの地すべり地形を1:25,000分の1の地形図で判読できる.また,地すべりの側部は,周辺に比べ地形が緩く沢状地形が発達し
ていることが多い.
(2) 坑口付近は沢に面していたり,やせ尾根に取り付いていたり,あるいは片
斜面に取り付いていたりといった特殊な地形に位置していることがある.
やせ尾根では風化が深部まで及んでおり,かなり深くまで突っ込まないと安定
した地山とならないことがある.
等高線の幅が不揃いである場合には尾根全体が緩んでいる可能性があり,異様に平坦な尾根は風化が深部まで及んでいる可能性が高い.
また,単調に見える斜面でも崖錐堆積物が意外に厚い場合や段丘堆積物が崖錐堆積物の下に隠れている場合があり,注意が必要である.
(3) 大規模な破砕帯はリニアメントとして地形図で判読できる.鞍部や沢の曲 がり,直線状の沢などを目安に,とにかく疑わしい地形は全て拾い出すこと が肝心である(武田ほか,1976.参照).この段階では,地質的弱層となりう る地形を全て拾い出す.
(4) 地形図から湧水点を拾い出すことはかなり難しいが,沢の源頭付近で沢が ばらける地形の扇の要の位置が湧水点である場合が多い.
(5) 水系を丹念に拾い出した水系図は,谷密度の粗密が見事に現れることがある.
一般に,風化したマサや砂岩のように地山の透水性が高い地質の分布域では
谷密度は粗となり,泥岩のように透水性の小さい地質の分布域では谷密度は
密となる.
以上のようにして拾い出した地形的特徴は,1:25,000の地形図にそのまま,ま たは1:10,000程度に拡大して記入する.営林署の森林基本図が手に入ればこれを 利用するのもよいが,等高線がしっかりしていて地形が読みやすいのは国土地理 院の図面である.とにかく,トンネル直近だけでなく,やや広い範囲にわたり地 形図を読み,類似した地形を拾い出すようにする.
なお,空中写真の種類と入手方法を表3.1に示した.
撮影計画機関 | 撮影区域 | 撮影年次 | 縮尺 | 申込先 |
国土地理院 (国土基本図用) | 平野部 | 1960〜 | 一部 1:10,000 大部分1:20,000 | 日本地図センター |
国土地理院 | ほぼ日本全域 | 1964〜 | 約1:40,000 | 日本地図センター |
国土地理院 (国土整備事業用) | 全国 (カラー) | 1974〜 | 平野部1: 8,000 山地部1:10,000 〜 1:15,000 | 日本地図センター |
林野庁および 都道府県林務課 | 山地部 | 1952〜 | 約1:20,000 | 日本林業技術協会 都道府県庁 |
米軍 | 日本全域 | 1946〜 1948 | 約1:40,000 | 日本地図センター |
米軍 | 鉄道沿線 主要平野部 | 1946〜 1948 | 約1:10,000 | 日本地図センター |
それぞれの申込先の電話番号等は次の通りである.
(財)日本地図センター 東京都目黒区青葉台4-9-6
TEL:0298-51-6657〜8
FAX:0298-52-4532
URL: http://www.jmc.or.jp/
(財)日本林業技術協会 東京都千代田区六番町7
TEL03-3261-6952
FAX:03-3261-3044
URL: http://www.jade.dti.ne.jp/~jafta/
*ランドサット,イコノスなどの衛星写真の入手先
(財)リモートセンシング技術センター
東京都港区六本木1丁目9-9 六本木ファ-ストビル12階
TEL:03-5561-9771
FAX:03-5561-9540
http://www.restec.or.jp/
空中写真の縁にある記号は次のようになっている.
TO−77−1 | 7 | C8 | −1 | 9:28 | TH | 1800 |
地方名−撮影作業年度−番号 | フィルム ロール番号 | コース 番号 | 写真 番号 | 撮影月日 | 撮影会社 | 海抜高度 |
空中写真では,水系を丹念に追うことから始まり,段丘面,山頂平坦面,崖錐面,崩壊地形,遷急線・遷緩線(遷緩線=山頂から下ってきて斜面が緩やかになる点を結んだ線.遷急線はその逆.),鞍部,沢の異常な曲がりなどを拾い出す.
判読にあたっては,とりあえず自分がそうであると判断したものは「全て残らず拾い出す」ことが大切である.その上で,身近にいる人にクロスチェックを行ってもらうことが有効である.
空中写真の特殊な利用方法について述べる.
(1) 積雪があまり多くない時期の,うっすらと雪が積もった状態の空中写真では,湧水点が非常に明瞭に判読できる.
(2) 火山岩地帯では溶岩の噴出単元の境界が判読出来る場合がある.
(3) 池,沼,湧水点等が直線状に並ぶ場合には,それに沿って断層が分布していると考えてよい.
(2) 中央に鏡肌があってその両側,時として片側だけがぐざぐざした粘土があって所揉まれているもの.
(注)規模としては数10cm程度の粘土化帯とその周辺の破砕帯とからなり,小規模な断層である.
(3) 相当悪い断層で両側に鏡肌があって,その間を断層帯と称し,その部分の岩石は断層により打ち砕かれて荒い部分は回転して角がなくなり,丸くなって表面はつるつるした断層角礫となっている.細かい部分は粘土となって角礫を包んでいる.このような断層帯に水を含んでいるとまことに始末が悪い.三島口から約1,510m地点はこの断層があり,両側は安山岩のしっかりしたものでありながら破砕帯の幅が約9m(三十呎(フィート))もあって大変苦労した.
(4) この断層は(3)の両側に(2)のような破砕帯を持っているもので,幾度も断層で動いたために出来たもの.
(5) 断層群ともいうべきもので,主断層を挟んで無数の断層群が密集したもの. 三島口から3,660mの丹那断層はこれに相当し,幅の広いところは約18m(60呎)あり,地質時代以来数限りなく動いて発達したものと見える.
(断層の記述は「丹那トンネルの話」の説明文のままである.断層の幅は呎(フィート)で表現している.(注)はスケッチを見ての規模を筆者の感じで述べた.)
(1) 地形判読,空中写真判読により活断層の通過位置を大まか推定する.
(2) 現地踏査により活断層の露頭を探す.必要な場合には表土を剥いだり,トレンチを行って活断層を確認する.
(3) 既存資料によりその活断層の最新活動時期と再来周期を求める.
(4) 次の活動時期が差し迫っている場合は,活断層の前後区間を可撓性の構造にするなどの検討を行う.次の活動までどのくらいの時間をもって差し迫っていると判断するかは難しい問題であるが,100年程度が妥当であろう.しかし,現在は研究段階でも数10年単位で次の活動時期を予測することは困難であり,総合的な判断が必要となる.
(5) 活動時期が差し迫っていない場合は,地山状況に応じて多少支保構造を剛にしておく程度でよいであろう.
一般には,活断層は山地と平地の境界付近を通っていることが多く,トンネルが直接活断層を横切ることは稀である.また,活動度の判定は活断層の繰り返し周期が判明しないと出来ないために,普通のトンネル調査では明らかにすることは難しい.
したがって,トンネル調査では活断層がトンネルを横断するかどうか,横断するとすれば破砕規模,程度,性状(透水性など)はどのようなものであるかを明らかにし,必要な支保構造決定のためのデータを揃えておくという対応で十分である.
なお,山陽新幹線新神戸駅は,六甲山麓の諏訪山断層の上に位置しており,工
事の際に断層の位置が確認されたので,断層部分に相当する構造物にジョイント
を設けた.
兵庫県南部地震(1995年1月17日,M7.2)では,諏訪山断層の地下深部が活動した可能性が高いとされているが,震源断層は地表まで延びなかったと考えられている(池田ほか,1996,207-208).
(1) リニアメントの抽出:線状に続く谷地形や崖,異なる種類の地形の境界な
どの地形的に続く線状模様(リニアメント)を抽出する.
(2) 変位基準地形の有無とその変位の向きの確定:同じ時代に出来たひと続き
の地形面(段丘面など)または地形線(河川や尾根)を基準としてリニアメント
を境としてその基準面(線)がくいちがっていることを確かめる.
(3) 変位基準地形の時代とその変位量の推定:基準地形面のくいちがい状態か
ら,横ずれ成分と上下成分を求める.また,変位基準地形の時代を種々の方法に
より確定する(表3.2参照).
(4) 活動度の判定:活動度は一般にはその断層の平均変位速度で示す(表3.3
参照).
(1) 崖地形 (縦ずれ地形,変動崖) | 断層崖,撓曲崖,低断層崖,三角末端面,逆むき低断層崖 |
(2) 凹地形 (変動凹地) | 断層谷,地溝,小地溝,断層凹地,断層陥没地,断層池,断層鞍部,断層角盆地 |
(3) 凸地形 (変動凸地) | 地塁,小地塁,ふくらみ(E),断層地塊山地,傾動山地,圧縮尾根 |
(4)横ずれ地形 | 横ずれ尾根,横ずれ谷,閉塞丘,段丘崖,くいちがい |
活断層の分類 | 第四紀の平均変位速度S(単位はm/1000年) | ||
---|---|---|---|
A 10>S≧1 | B 1>S≧0.1 | C 0.1>S≧0.01 |
復旧工法 | 施工ブロック数 |
覆工コンクリートの取り壊し,覆工新設 | 26ブロック |
クラック補修,炭素繊維シート | 51ブロック |
計 | 77ブロック(77/107ブロック=72%) |
覆工取り壊し |
地山改良 |
支保工縫い返し |
インバート打替え |
SFRC(スチールファイバー入り吹付けコンクリート)覆工 |