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2009年1月31(土)のアラスカの天気予報 |
フォートユーコンやタナナの予想気温が低くなっている.海岸沿いは比較的気温が高いと予想されている.表示は華氏である. (Fairbanks Daily News-Minner,Saturday,January 31 ,2009) |
午前11時30分にホテルを出発する.日中バスで町から出るのは初めてである.緩やかな起伏の道路を進む.幹線道路から横道に入ったところに住居が点在している.横道の入口に青い郵便受けがたくさん並んでいる.やはり凍上が激しいのだろう,道路は波を打っているところがあり船に乗っているようだ.これまでオーロラ見物に行っていたスキーランドロッジはフェアバンクスから北東に向かう スティーズハイウェイの途中である.このハイウェイをずっと行くとユーコン川河畔の町サークルに着く.チェナ温泉へはチェナ川に沿ってほぼ東に向かう.道路が整備されたのはごく最近で,それまでは犬橇やクロスカントリースキーで行っていたのだという.
道路から見える範囲の林はトウヒ類と白樺であるが,どちらもせいぜい樹齢20年くらいである.山全体が枯れ木の所もあり山火事の多さを感じる.
チェナ温泉に向かう道路の分岐立体交差では日本と同じ仕様の補強土壁が採用されていた.また,道路の切土は幅高さとも1mほどの階段切りになっている箇所があった.ほとんどは切りっぱなしである.
立体交差の橋台部の補強土工法 | 段切りの切土 |
スティーズハイウェイとチェナ温泉に向かう道路の分岐点. | 高さ,幅とも1mくらいで切土している.木が生えてくれば大分見た目は変わってくるだろう. |
チェナ温泉全景 | アイス・ミュージアム |
何の変哲もない山の中の温泉である.周りの山もそれほど高くなくなだらかである. 右側は長さ500m くらいの滑走路である. |
地熱発電で作った電力でコントロールされていて室内は−7℃くらいに保たれているので,外より暖かい.夏は外気温は30℃以上になるが温度コントロールが出来る構造となっている.外壁は氷のように見えるがそうではないようである. |
まず,アクティビティーセンターで全体の説明を受ける.説明してくれたのは森さんという日本人である.ここの自慢は“北米一の大きさの露天風呂”と70℃の低温熱水を利用した発電システムである.
露天風呂というと誤解を招く.露天プールである.室内のジャグジーもプールも露天温泉も全て水着着用である.
とりあえずの予定は午後3時出発の山頂雪上車旅行である.それまで時間があるので犬ゾリの犬たちを見に行く.寒い中,身体一つがやっと入れる大きさの犬小屋の前に70頭近い犬が繋がれている.観光用のソリは10頭くらいで引いていた.どの犬も走りたがってソリが一回りしてくると一斉に吠え立てる.犬ゾリレースでは氷で足にケガをすることがあるので旅のような切れの袋を着けることがあるという.
犬ゾリ | |
10頭ほどの犬で引いて走る.先頭の2匹がリーダーで全体に気配りをしているようだ. 後ろに見える黒い箱が犬たちの小屋で身体一つがやっと入るくらいの大きさである.ハスキーは少なくポインターとの混血が多いそうだ. 遠くの山には,山火事で焼けた木が立っている.ちなみに,現在のグーグルアースでチェナ温泉付近を見ると山火事発生中である. |
遙か南にアラスカ山脈が見える.マッキンリーは尖った山容を見せている.今立っている尾根の周りの山は森林限界を超えていて尾根の付近は真っ白である.今いるところはまだトウヒ類がありやや低い.標高は850m程度で,1,000mを越えると森林限界になるようだ.
すっかり夕日が落ちるまで眺めて下る.帰りは助手席に載せて貰った.チェナ温泉,チェナ川などがよく見える.急斜面では車が転げ落ちそうな感じである.
アラスカ山脈を望む |
遙か彼方にアラスカ山脈が見える.中央やや左の三角形の山がマッキンリーである. 植生はほとんどトウヒ類のみである.雪の深さは50cm 程度でそれほど多くない. |
東の山々 |
夕日で赤く染まったチェナ川源流の山々.標高は1,000m 程度でそれほど高い山ではない. |
尾根からの帰り | |
急な斜面では前に転がるのではと思うほどである.谷底に見えるのはチェナ温泉で湯気が上がっている. |
食事を終わって午後8時から温泉内のエコツアーの参加する.
まず,こぢんまりとした部屋で岡田洋輔氏の説明を聞く.岡田氏は農学が専門で,地熱発電でエネルギーを得て食料生産の自給を行うことをテーマに開発に取り組んできた.1998年から地熱資源に着目し,それまでディーゼル発電であったチェナ温泉で70℃の熱水による発電システムを造った.自給自足システムの構築を目指している.
地熱の利点は供給が安定していること,環境負荷が少ないことである.熱水を熱交換機に通しその熱で発電をして熱水は地下に還元する.現在2台の発電機が稼働しており,小型の3号機の建設を進めている.この発電システムの要は低温熱水から熱を取り出す媒質にあるようだ.
このチェナ温泉の取り組みは「地球の歩き方 アラスカ '09〜'10」のコラム欄に載っている(p282-283)
チェナ川沿いは古生代の変成岩類が分布しており,その中に第三紀の花崗岩貫入している.この花崗岩が熱源になっているようだ.チェナ温泉の南東にも花崗岩の岩体が分布している.温度156°F (約70℃)のお湯が日量200,000ガロン(=760m3)出る.チェナ川沿いには点々と花崗岩体があり,温泉はほかでも出そうである.
新田次郎が取材旅行中に入ったというサークル温泉も花崗岩体の縁に位置している.サークル温泉の方が量,温度ともやや小さい.
この説明のあとまず発電所を見学する.思ったより小型である.次に温室の状態を見学する.トマトが20m以上の茎を地面(といってもコンクリートの床)に這わせているのにはビックリした.レタス,トマトが主な作物のようだ.
チェナ温泉での夕食 | 地熱発電機 |
ここでもプレート料理である. 量が多いので,ちょっとビールを飲んで楽しむには文句はないが,もう一皿くらい欲しい. |
手前のが2号機で,向こう側のが小型の3号機である.見学用のスペースが作られていてガラス張りとなっている. |
温室で栽培されているレタス | 同じくトマト |
レタスを手に持っているのは CCREST 自然資源開発計画コーディネーターの岡田洋輔氏 | ポットの周りに巻かれているのはトマトの茎である.温泉で利用するほかに出荷もしている. |
アイス・ミュージアムの暖炉 | |
全てが氷で出来ている.椅子には毛皮が置いてあるので冷たさは感じない.宿泊することも出来る. |
午後10時から温泉にはいる.久しぶりに運動をした.まず,屋内のプールで泳ぎそれから屋外の温泉に行った.屋外の温泉にはいるまでの寒いこと.おまけに暗いのともうもうたる湯気で全体の様子が全く分からない.探り探り入る.足元は砂利で深さは胸の辺りまである.人にぶつからないように泳いだり歩いたりしてしばらく身体を動かす.
午後11時からアクティビティーセンターでオーロラが出るのを待つ.晴天で星がよく見える.三日月が西の空に沈もうとしている.
沈む月とチェナ温泉 | |
午後10時過ぎ,三日月が西の空に沈んだ. ライトに輝くチェナ温泉のアクティビティーセンターとアイス・ミュージアム. |
みんな去りがたく午前1時半まで粘って,もう一度オーロラダンスを見ることが出来た.このオーロラは雪雲が遙か上空で粉雪を降らせているような感じで,エスキモーの人たちの神話に出てくる,狐が尻尾で雪を舞い上げているという感じがよく分かる.午前1時半にオーロラは収束した.
オーロラが出始めた |
北西の空にオーロラが出始めた.この写真だけは撮れたがあとは電池がダウンして撮影に失敗した.慌てていると吐く息がカメラにかかり霜が出来る. この晩は,月も雲もなく絶好の条件でオーロラは頭上近くに現れた.二度目のオーロラは本当に雪が降るように空高くで踊っていた. |
午前2時30分にホテルに戻る.この晩の気温は多分-40℃くらいであろう.とにかく寒かった.手袋を外すと指先がほとんど感覚がなくなった.部屋に戻ってシャッターを押すとカメラはようやく回復した.何も食べずにとりあえず寝た.今日は朝8時出発である.
午前8時ホテルを出発する.気温は-35℃である.チェックインをして航空券を受け取りスーツケースを預ける.
帰りはスーツケースには鍵を掛けないように注意された.添乗員の人たちはTSAロック付きのスーツケースを使っている.TSA(Transportation Security Administration:アメリカ運輸保安局)によって認可・容認された鍵で,手荷物の検査の時に運輸保安局の係員がマスターキーで開けることの出来る鍵である.スーツケースだけでなくこの鍵の付いたスーツケースベルトがあるのでそれを使うのも一つの方法である.今のところこの鍵が必要なのはアメリカに行く場合で,もちろんハワイやアラスカ,グァム,サイパンなどへ行く場合もあった方が良いそうである.
出国審査はパスポートの検査のみである.女性の係官一人で対応していた.手荷物検査ではフィルムを別検査にして貰った.英語は何とか通じた.
妻は,お土産に買ったシロップのビンが制限オーバーとかで荷物を開けて検査された.
フェアバンクス空港の朝 | フェアバンクス空港のロビー |
今朝はかなり寒く,道路脇の温度計は−35℃であった. 遠くに見える煙突はダウンタウンの火力発電所で煙がある高さまで行くと横にたなびいて地面に戻っていく.寒い日に起こる現象だそうだ. |
出国審査,機内持ち込み手荷物検査が終わったあとの搭乗口に繋がる待合室で,お土産屋さんやコーヒーショップがあってくつろげる. |
フェアバンクスの朝日 |
出発近くになってお日様が出てきた.太陽の右側に氷晶の虹の一部が見える. |
飛行機の出発予定は午前10時35分である.2時間近く空港待合室で待つことになる.午前10時10分にお日様が出てくる.ダウンタウンにある火力発電所の煙はほとんど立ち上らず水平に少し流れて下に落ちている.気温が低い時の現象だそうだ.お日様がすっかり上がった時氷晶による虹の一部が見えた.遙か遠くにマッキンリー山の三角の頂上が見える.
午前11時40分にファアバンクスを出発する.帰りは翼の直ぐ後ろの窓側のA席(左側)である.上昇中にマッキンリー山が間近に見えたが主翼に隠れて再び現れた時には遙か後ろになってしまっていた.
眼下には蛇行する川がいくつも見えた.多分タナナ川であろう.到る所に三日月湖がある.しばらくして海に出る.一面海氷の原である.所々で海氷が破断している.よく見ると真っ白な部分とその間を埋めるように茶褐色に汚れた部分とがある.だんだん氷が小さくなり開けた海原になった.パンの軽食を食べ終わった頃釧路沖を通過する.免税申告書を書いて到着の準備をする.
タナナ川 | 蛇行する川 |
いかにも大陸の川という感じである. | 到る所に三日月湖がある. |
遙か彼方にアラスカ山脈 | 一面の海氷 |
飛び立った時には主翼の上から大きく目の前に見えていたが,次に見えた時は遙か彼方であった. | ベーリング海峡の出口付近は海氷で覆い尽くされている.割れ目は引張亀裂に見える. |
広尾の辺りを通り日高山脈を越えて鵡川辺りでまた海に出て大きく南に回り込んで,2月2日(月)午前11時40分,千歳空港に着陸した.
アラスカと日本の時差は6時間,2月1日に午前11時40分にフェアバンクス発ち,2月2日の昼の12時頃千歳に着いた.6時間30分の飛行機の旅で同じ時間の次の日になったということである.グーグルアースでおおざっぱに計ったフェアバンクス−千歳間の距離は5,300kmである.平均時速は約815kmである.
北海道の雲はモクモクと立ち上っている.フェアバンクスの雲は地面に張り付くように平板である.この形を見ただけでも暖かさが違う感じがした.
日高山脈 | フェアバンクス−新千歳の航路 |
この左の彼方に襟裳岬がある. | フェアバンクスからだとカムチャッカ半島の上を通過すると近いが千島列島の南側を通る. 日付変更線はアメリカとロシアの国交で大きく曲がっている. |
出国審査は問題なく通過した.午後2時前に無事我が家に帰り着いた.
写真の現像とCD化を直ぐに頼んだ,フィルム11本でしめて1万2千円である.覚悟を決めればそう高い値段ではない.
今回の旅行を機会にデジタル一眼レフカメラを買おうといろいろ検討したが,防寒用の道具などほかにも出費があり諦めた.
最後のオーロラ撮影失敗は残念だったが,非常に面白い,ハードな旅であった.
(おわり)
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