2.2.3 比抵抗二次元探査(電気探査)

 比抵抗二次元探査探査で求まる地山の比抵抗は,岩石の種類,水分飽和度(地山の間隙中に占める水の割合),間隙率(地山の体積に占める間隙の体積),粘土鉱物含有量,地下水比抵抗などを反映していると言える.
 転石の多い崖錐堆積物が分布し弾性波探査では基盤岩との境界が把握しにくい場合,地下水の賦存状態を知りたい場合,滞水性の破砕帯が分布している場合,含水率の高い粘性土が挟在している場合,地すべり面を検出したい場合などに有効である.

 様々な要素があるので一概には言えないが,次のような傾向が示されている(災害科学研究所 トンネル調査研究会編,2001).

(1)岩種毎の比抵抗はあまり差別的ではない.比抵抗としては,10~104Ω・mの範囲に収まる.
 高い比抵抗を示す岩種は石灰岩,チャート,砂岩,砂礫などである.これに対して,低い比抵抗を示すのは凝灰岩,泥岩が代表的である.

(2)岩石でも土でも間隙率と比抵抗は比較的明瞭な関係が見られる.間隙率が5%程度であると比抵抗は100Ω・m程度まで低下する.

(3)岩石でも土でも含水比(土粒子の質量に対する間隙中の水の質量)の増加とともに急激に比抵抗は低下する.岩石の場合,含水比が30%程度となると100Ω・mを下回る.土では含水比15%程度で200Ω・mを下回る.

(4)地下水の溶存イオン量も比抵抗に影響を与える.溶存イオン量が30%以上になると比抵抗は50Ω・m以下となり,明瞭な関係を示す.

(5)変質安山岩中の粘土鉱物の種類によって比抵抗が変化するという報告もある(宍戸ほか,2000).変質鉱物としてスメクタイトが特徴的な変質安山岩では比抵抗が80Ω・m以下となるのに対し緑泥石やセリサイトが認められる場合は最大200Ω・mの比抵抗を示す.


tunres_fig223_2.jpg
比抵抗と間隙率の関係 (トンネル調査研究会編,2001)
左:岩石の比抵抗と間隙率の関係;間隙率が4%以上になると値は収束してくる.
右:土の比抵抗と間隙率の関係

比抵抗二次元探査の有効性

 比抵抗二次元探査の有効な地質としては次のような場合が挙げられる.

(1)本来均質な岩盤で,二次的な構造運動などにより不均質となったもの.
 例えば,花崗岩中に破砕帯が分布し周囲に比べ透水性が高いような場合には有効である.つまり,比抵抗二次元探査探査の特徴は,地下水もしくは含水率の高い地質に対して鋭敏なことである.

(2)第四紀の火山岩地帯や中新世火山岩類中に形成されている変質帯や粘土化帯の検出に有効である.場合によっては滞水層に対するよりも敏感である.

(3)地すべり地では,すべり面あるいは地下水胚胎層を検出できる場合がある.

(4)地山の比抵抗値から地山弾性波速度を推定しようという試みあるいは比抵抗値を用いて地山評価を行おうという試みがなされている.
 これは地層の比抵抗と弾性波速度とが,それぞれ間隙率と一義的な関係にあることを用いて地層の比抵抗から換算弾性波速度を求めようとするものである.


tunres_fig223_1.jpg

地山比抵抗値による地山分類の例 (朴ほか,1996)
上:比抵抗断面図と切羽データから求めた岩盤評価値グラフ(値が大きいほど地山状態は悪い)
下:A;地山弾性波速度(km/sec) B;比抵抗値(Ω・m) C;施工支保パターン D;岩盤評価値による地山区分 E;比抵抗値による定量的地山区分


tunres_fig223_4.jpg

中新世から更新世の火山岩類中のトンネルでの比抵抗二次元探査探査結果

 青が低比抵抗の部分である.左側の高比抵抗部分は安山岩の比較的良好な岩盤である.右側は地下水の豊富な更新世の火砕岩類である.


参考文献


“山岳トンネルの地質調査の目次”へ戻る

“貯蔵庫”へ戻る