6.4 トンネルと地すべりの関係

 基本的にはトンネル坑口を地すべり地内に設けることは避けるべきであるが,前後の取り合いから避けられない場合がある.
 トンネルと地すべりの関係は,トンネルが地すべり土塊中を通過する場合とトンネルが地すべりの直近を通過する場合とに分けられる.
 トンネルが地すべり土塊中を通過する場合でも,頭部であれば地すべりにとっては頭部排土となり,地すべり全体の安定度は計算上向上する.末端を通過する場合は,地すべりの足元をすくう形となるので,当然安定度は低下するが地すべりの規模との関係で安定度の低下率は変わってくる.

 地すべり直近を通過する場合は,トンネル掘削幅(D)の2倍程度の土被りより接近していると影響を与える可能性があるとされている.


←“山岳トンネルの目次”へ戻る

←“トップ”へ戻る


トンネルが地すべり土塊中を通過する場合

 トンネルが地すべり土塊中を通過する場合のトンネルと地すべりの関係は大きく次の二つに分けられる.

 いずれにしても,トンネルに関わる地すべりの安定度を考える上では三次元的な考え方が必要である.


tunres64001.jpgtunres64002.jpg
図6.4.1 トンネルと地すべりの位置関係(板垣,1981,p38 をもとに制作)
(1.1) トンネルが地すべり運動方向に並行で,地すべり頭部を通過する場合.
 地すべり全体の安全度は上昇する.ただし,地すべり移動土塊中でのトンネル掘削であり,地山状況に合致した十分な支保構造とする必要がある.特に,地すべり頭部では,開口亀裂が発達し地下水が突発することもあるので地下水に十分注意が必要である.

(1.2) トンネルが地すべり運動方向に並行で,地すべり末端を通過する場合.
 この場合は,地すべり末端の荷重を除くので地すべりの安定度は大きく低下する.また,トンネル坑口方向に応力が作用しているので,トンネル縦断方向に変位が発生する可能性があり,事前の地すべり対策工が必須である.

(2.1) トンネルが地すべり運動方向と直交で,地すべり頭部を通過する場合.
 地すべり全体としては,頭部排土となるので安定度は上昇する.ただし,地山は亀裂が多く崩壊性であるので十分な支保構造とする必要がある.

(2.2) トンネルが地すべり運動方向と直交で,地すべり末端を通過する場合.
 地すべり末端を広い区間で除荷することになり,地すべり安定度は大きく低下する.また,山側からの偏圧が作用するので,事前の地すべり対策が必要である.


 トンネルが地すべりの下を通過する場合トンネルがすべり面の下を通過する場合の地すべり解析は非常に難しいとされている(板垣,1981).これまでトンネル掘削により滑動した地すべりの実績から,すべり面から2D(D:トンネル断面の下幅)以内の位置をトンネルが通過する場合は,安定検討を行い対策工を検討する必要がある. 板垣の提案は次のような方法である(図6.18参照). (1) トンネル掘削による緩みゾーンとすべり面との交点を求める.この場合の緩みゾーンはトンネル側壁から,α=45°+φ/2(φは地盤の内部摩擦角で,一般的には30°とする)の角度で設定する.(2) この二つの交点のうち山側の交点から地すべり土塊に鉛直線を立て,この鉛直線から山側の土塊の滑動力(T’)を求める.この時のせん断定数は,地すべり全体の安全率を仮定し逆算により求めた値を用いる.(1) 山側土塊の滑動力(T’)の0.1−0.2に相当する抵抗力を付加して斜面の計画安全率を決定する. Pf={Σ(N-U)tanφ+CΣl+Pr}/ΣTただし,Pf:計画安全率Pr=(0.1?0.2)T’(4) 必要抑止力をカバーするのは全体の地すべり斜面内で杭工,地下水排除工,切土工,盛土工などを計画する.この方法では,便宜的にトンネル掘削による緩み領域の山側の地すべり土塊を安定させるの必要な抑止力を求めて地すべり全体を安定させようという考え方である.トンネルによる緩み領域全体を考慮すると対策工が異常に過大となるという欠点を補うために考えられた方法である. 図6.18 地すべり地外にトンネルがある場合の必要抑止力の考え方(板垣,1981,p42) ただし,この考え方にもとづく安定検討は,現在使われなくなっている.現在用いられている方法については,6.3.3章でふれる.6.3.3 トンネル坑口地すべりの安定計算 安定計算の方法トンネル掘削による地すべり安定度の低下を検討する方法としては,次の三つが使われる.道路公団法(二次元安定計算の改良版=板垣の方法を発展させたもの)近似三次元解析(ラム?フィットマン法)三次元解析(ホフランド法など)道路公団法はこれまでの安定解析の延長線上で計算可能である.基本的考え方は,トンネルによる地すべり土塊の荷重の改変(トンネル掘削による土塊の除去)を地すべり横断の面積で案分して土荷重を減じて計算するものである. 近似三次元解析は,ラム?フィットマン(Lambe & Whitman)により提唱されたもので,一つの地すべりブロックに複数の二次元解析断面を設定し,それぞれの安全率を断面積により加重平均し全体の安全率を求めるものである.断面の取り方によっては三次元解析よりも大きな安全率が出ることがあり,中央断面に修正係数(ξ)を乗ずることが提案されている(申,1989). 三次元解析はホフランド法,レシュチンスキー法などがあるが,任意のすべり面に対する解析法としてはホフランド法が用いられる(中村ほか,1989).レシュチンスキー法は理論的根拠が明確で計算精度が高く間隙水圧を考慮した解析が出来るなどの特徴があるが,最も危険なすべり面とその時の安全率を求めるための解法である.ホフランド法は,側壁部が全体すべりに対してどの程度の割合となるかにより安全率が左右される.すべり面が急な冠頂部付近では有効垂直応力が負の値を取ることがあり,三次元解析の安全率が過小となることが予想される. 以上のように,三次元解析法は種々の問題があるが,現段階ではホフランド法での解析が用いられている.ホフランド法による三次元解析の例を図6.23に示した. 道路公団法による安定計算(トンネルが地すべり土塊中を通過する場合)この方法は,大がかりな計算を行わずにそれほど大きな間違いをしないでトンネル坑口の対策工が検討できる方法として優れている.この方法では,地すべり滑動方向がトンネル軸方向の場合とトンネル横断方向の場合とに分けて考える必要がある.実際にはトンネルと地すべり方向が斜交しているので,その場合は安全側の方法を採用することになる. (1) 地すべり滑動方向とトンネルが平行な場合すべり面に作用する土荷重はそれぞれのスライスでトンネル掘削による除去土塊分を減少させる.この時,各スライスで横断図を作成し,地すべり横断形の面積(A)とトンネル掘削により除去される地すべり土塊の断面積(a)を求め,案分して主測線(解析断面)上の土被り高さ(地すべり土塊の高さ:h)を減少させる.Σ{(A-a)/A}*h トンネルが地すべり末端付近を通過する場合には,その部分の土荷重が減少するので,地すべり全体としては末端切土となり安定度が減少する.その減少率は地すべり横断面積に占める掘削断面の比により低減されるのでより現実に近いものとなる.この場合,トンネルはすべり面を完全に切るので,粘着力の低減を行う必要がある.この低減方法は,やはり横断図で地すべり全体のすべり面の長さ(B)に対するトンネル掘削により切られるすべり面の長さ(b)の比率で縦断方向のすべり面の長さを減少させる. CΣ(b/B*l) トンネルと地すべりとの関係いかんではこの場合の安全率の低下はかなり大きくなり,25%程度低下した例がある(北海道占冠町赤岩トンネル).特に,すべり面が緩い場合には圧縮ゾーンをトンネルが切っていくので安全率の低下は大きくなる.一般の地すべり解析では,すべり面が最も深くなる主測線を決めて安定計算を行うので,地すべりの横断形上はそれほど問題とならない.しかし,トンネル坑口地すべりでは,地すべりの横断形状が安全率の低下に直接響いてくる.側崖が明瞭な場合や沢地形が両側にあり横断形状を決めやすい場合は問題ないが,不明な場合には比抵抗二次元探査やボーリングで横断形状を把握する必要が出てくる. 以上をまとめると次の式となる. Fs=[Σ(W’cosθ-U)tanφ+CΣL-CΣ(b/B)l]/[ΣW’sinθ] ただし,  C:すべり面の粘着力(掘削前の値)φ:すべり面の内部摩擦角(掘削前の値)L:全体のすべり面の長さl:トンネルがすべり面を切る長さB:地すべり横断面でのすべり面の長さb:地すべり横断面でのトンネルがすべり面を切る長さW’:各スライスごとの重量(トンネル掘削による減少分考慮=h{(A-a)/A)})h:主測線上での土被り高さ(掘削前)θ:各スライスごとの重心直下のすべり面傾斜角U:間隙水圧(トンネル掘削による水位低下は考慮しない)Fs:安全率 (2) 地すべり滑動方向とトンネルが直交する場合この場合は,トンネル掘削により除去される地すべり土塊の土荷重をそのまま(面積配分で低減しないで)土荷重の減少として主測線上で計上する.また,トンネル掘削により除去された部分の上部の土荷重はその真下のすべり面に作用するとして計算する.トンネルがすべり面を切る部分の粘着力はないものとする. Fs=[Σ(W’cosθ-U)tanφ+cΣL-cΣl]/ [ΣW’sinθ]ただし,記号は上の式と同じ. 実際には,地すべりブロックの側崖付近ではトンネル掘削による土荷重の減少は生じないので,この方法による安定計算では過大な対策工となる可能性が大きい.その点を考慮すると近似三次元解析が有効となる. 以上のような計算は,表計算ソフトにより作成したもので比較的簡単にでき,ホフランド法による三次元解析とそれほど大きく狂わない.ただし,すべり面形状により大きな差が出ることがあるので注意が必要である.特に,対策工の検討ではすべり方向を考慮できる三次元解析と併用してチェックする必要がある. 図6.19 トンネル坑口地すべり解析の説明図(日本道路公団,1998,参3-27) 道路公団法による安定計算(地すべり地の下をトンネルが通過する場合)この場合の手順は次の通りである. (1) トンネルが想定すべり面の下,2D以内にあるかどうか判定する.(2) 地すべりの危険度区分を行う.(3) 「危険度特A」の場合は,通常の地すべり対策工を行う.(4) 「危険度A」の場合は,ゆるみ範囲内にあるすべり面の土質定数を低減して安定計算を行う.ゆるみ範囲はトンネル壁面から45°+φ/2の角度で立ち上げた線とすべり面が交わる交点とする.この範囲の土質定数を低減する. Fs=[Σ(N-U)tanφ-Σ(N’-U’)tan(1-βφ)φ+cΣL-(1-βc)Σl]/ΣT だだし,Fs:計画安全率N :分割片の重量による法線力U :すべり面に作用する間隙水圧 N’ :ゆるみ範囲内にある地すべり面上にある分割片の重量による法線力U’ :ゆるみ範囲内にあるすべり面に作用する間隙水圧L :すべり面全体のすべり面長C :すべり面の粘着力φ :すべり面の内部摩擦係数βφ :φの低減率(土質により0.75?0.85とする)βc :cの低減率(土質により0.4?0.6とする) ゆるみ領域の考え方 緩み領域のすべり面強度の低下率は次のように取り扱うことが当初提案された.すなわち,緩みによるすべり面強度の低減率(α)を0.3?0.4とする.この根拠は,緩み領域の弾性係数の低下率が岩盤等級によらずほぼ0.4であるというデータによる((社)日本トンネル技術協会,1981).この低減率を粘着力と内部摩擦角に配分する.内部摩擦角は一律に当初の値の3/4とし粘着力の低下率を計算により求める. 表6.12 ゆるみ領域におけるCの低下率(C’/C0)(奥園,1997,p18)φ0α10゜15゜20゜25゜30゜0.300.310.320.330.340.350.400.420.430.440.450.46一方,すべり面の下方には地すべり運動による歪みゾーンが形成されることが分かっているが,この歪みゾーンの厚さは0.1H(H=地すべり層厚)程度とされている.以上のようにして求めたゆるみ領域が地すべりの安定度をどの程度低下させるかの検討を行う.すなわち,すべり面とトンネル天端との距離は少なくとも10m必要で,これまでの地すべり地外でのトンネル施工による地すべり発生事例を見ると20m以上を確保するのがよい(板垣,1981,P41).なお,すべり面の傾斜については三次元的に検討する.地すべり滑動方向に直交にトンネルを掘削した場合で,トンネル掘削による水位低下を見込んだモデルケースの安定計算では安全率が6%程度低下する場合があるとされている. 以上のような検討を経て決定したのが上に示したゆるみ領域の扱い方である. トンネルの方から見た場合,NATM工法でトンネルを掘削した場合の緩み領域は,これまでの測定結果からはほぼ6m以下で,変位測定による緩み領域は0.6D程度とされている.トンネル補強工法や地質条件によってトンネル掘削によって生ずる緩み領域を0.5D?1.0Dとする(奥園,1997). 図6.20 緩み領域の概念図(板垣,1981,40p) a)現状安全率 1.00b)逆算法によりC,φを求める。c)下の図でトンネルがすべり面を切るIの部分の土塊強度は0とする。d)トンネル上部のabの部分の土塊重量はIの部分に働くものと考える。e)安定計算式は一般の式を用いる。 f)結果測点円弧すべり面強度現状安全率トンネル掘削後の安全率 CTf/m2tanφ SP1790円弧11.000.7561.000.99 円弧20.900.5551.000.95図6.21 トンネルが地すべりに直交する場合の安定計算例(北海道天狗トンネル起点側坑口) a)現状安全率 1.05b)逆算法によりC=1.60tf/m2 φ=22.8゜(tanφ=0.420)c)トンネル掘削後の安全率 d)トンネル掘削による安全率の低下は約1%。 すべり面強度現状安全率トンネル掘削後の安全率C(kgf/cm2)tanφ 1.600.420(22.8°)1.051.04図6.22 トンネルが地すべりに並行な場合(北海道大滝トンネル終点側坑口) 図6.23 トンネル掘削により初成すべりが発生した例(北海道咲花トンネル中川側坑口)ケルンコルの前面に発達したケルンバットにトンネルの坑口が位置している.斜面には小規模の地すべりがいくつか分布している.地質は白亜紀上部の上部エゾ層群で,泥岩>砂岩互層からなる“付加帯”の地層である.トンネル上半掘削によりすべりが発生したため,下半掘削時の変位拡大が予想された.補強のためのサイドパイルおよびフットパイルを打設し,ケルンバット部分を排土して下半掘削を行った.6.4 坑口の地すべり対策工 坑口の地すべり対策工は一般的な地すべり対策と基本的には変わらない.特殊性は次の点にある. (1) 多くの場合用地上の制約が大きい.坑口は沢に直近していることが多く,最も工費的に有利な押え盛土が採用しにくい場合がある.(2) 坑口にはトンネル建設のための各種プラントや資材置き場,ズリ仮置き場などのヤードが必要となる.ヤードを決めるためには地すべり対策工が決まっている必要がある.さらに,電気室や排気設備などの恒久施設を設置するスペースも必要になる.(3) トンネル坑口の地すべり対策工では,対策工に断面欠損が生ずる.この断面欠損を考慮して対策工の規模を決定する必要がある.(4) トンネルを掘削すれば周辺の地下水位は当然低下する.地すべり対策工としての地下水低下工法が必要なのかという議論が出ることがある.しかし,トンネル掘削中に地すべりが滑動しする可能性がある場合は,掘削前に地すべり対策として地下水を低下させておく.また,トンネルの長期的安定性も保たれる.少なくとも,地すべり土塊中に掘削するトンネルでは,地下水位が高い場合には地下水排除工は必須であろう. トンネル坑口の地すべり対策を検討するための流れ図を示す(図6.24). トンネル坑口の地すべり対策を検討する上での留意点は次の通りである.(1) 問題となるのは地すべりとトンネルとの関係である.また,解析上も地すべりブロックの横断形が必要となる.微地形,湧水点,植生等を十分考慮して地すべりブロックの形態を三次元で把握する必要がある.また,すべりの方向と解析測線とが一致しない場合が多いので,対策工検討時にはこの点も考慮する必要がある.(2) 現状安全率,計画安全率の設定は一応の目安が示されている(表6.13参照).この表では計画安全率と対策工による安全率増加量が示されており,グレードBまでは十分な調査が必要とされている.(3) 多くの場合トンネルと地すべりの関係は斜交することが多いので,トンネルが地すべり滑動方向と直交するか,並行するかにより計算式が異なるので,どちらがより実際に近いか判定を行う必要がある.(4) 側崖が明瞭な地すべりの場合は,横断形状を決めるのは比較的容易であるが,風化岩すべりなどでは側崖が明瞭でなく横断形状の決定が難しい場合がある.微地形等を丹念に拾うとともに,横断図,平面図を照らし合わせて無理のない横断形状を決定する.地すべりのタイプと一般的な横断形状も考慮する.この点では,コンピューター(PC)を使った三次元モデルを作成し,合理的な地すべりの形態を作成するのが有効である.(5) 対策工は一般の地すべり対策工と大きな違いはない.例えば,坑口の押え盛土工の場合は,トンネル区間が延長されることがあるので全体の工事費が高くなる点を考慮して比較検討する必要がある. また,アンカー工や抑止杭工ではトンネル内から打設するロックボルト(坑口付近では上半下部から下半にかけて長さ6m)により損傷しないように配慮する必要がある.(6) 道路公団法による解析では地すべりの活動方向を考慮できないので対策工が過大となる傾向にある.この点を改良する方法としては三次元解析がある程度有効である. 図6.24 トンネル坑口地すべり対策工検討の流れ図 表6.13 それぞれの危険区分ごとにおける地すべり型分類の安全率(板垣,1982,p49) 危険度区 分地すべりの変状・地形特性変動程度(計測調査)現状の安全率計画安全率(Fs)対策工による安全率増加量グレードA主亀裂(1次亀裂)または末端亀裂が発生しているもの,あるいは現在活動中の地すべりブロックで,土塊の切盛り,排水不備などの人為的な環境変化の有無にかかわらず道路,家屋などに直接の被害を及ぼす可能性の大なるもの.新しい主亀裂ならびに側面亀裂が発生しているものは危険度特Aとして別途区分する.変動A,変動Bに区分される変動を生じているもの.それぞれの時すべリタイプにおいてFs=1.0とするFs=1.2?1.2520?25%グレードB直接的な地すべり運動の徴候は認められないが,地形的に古い滑落崖が分析するなど,明らかな地すべり地形(崩積土,風化岩地すべり)を示し,地すべり発生の素因を有するもので,人為的な環境変化を直接の誘因としてすべり出す可能性が大であり,道路,家屋などに影響を及ぼすと想定されるもの.地すべりの拡大の可能性はあるが末端隆起を伴わないもの.周辺に人家が存在する地すべりブロックは危険度A',岩盤地地すべりの発生が予想されるブロックについては危険度B'として区分する.変動Cに区分される変動を生じているもの.岩盤地すべりFs=1.10風化岩地すべりFs=1.05崩積土地すべりFs=1.03粘質土地すべりFs=1.00Fs=1.2程度岩盤地すべり10%風化岩地すべり15%崩積土地すべり17%粘質土地すべり20%グレードC地形特性として地すべり地形を示すが,現状では安定(環境変化を加えないかぎり問題なし)と考えられるブロックで,仮に大規模環境変化によって地すべりが発生しても拡大の可能性は少なく,その時点で地すべりの処理が可能と判断されたもの.変動なし. グレードD地すべり地形を呈しないもの.現時点はもとより,将来においてもほぼ案tねいと考えられる斜面. 注)グレードBにおける現状の安全率は地すべり厚20mのものを標準として計画安全率の目標値を1.2とした場合である. 図6.25 地すべりタイプの断面,平面(日本道路公団,1998,p参3-23) 表6.14 地すべりの型分類(日本道路公団,1998,p参3-22)分 類 特 徴岩盤地すべり風化岩地すべり崩積土地すべり粘性土地すべり平面形馬蹄形,角形馬蹄形,角形馬蹄形,角形,沢型ボトルネック型沢型,ボトルネック型微地形凸状尾根地形凸状台地地形単丘状凹状台地形多丘状凹状台地形凹状緩地形すべり面形椅子型,舟形椅子型,舟形階段状,層状階段状,層状主な土塊の性質(頭部)岩盤または弱風化岩風化岩(亀裂が多い)礫混じり土砂巨礫または礫混じり土砂主な土塊の性質(末端部)風化岩巨礫混じり土砂礫混じり土砂一部粘土化粘土または礫混じり粘土運動速度2cm/day以上1.0?2.0cm/day程度0.5?1.0cm/day0.5cm/day以下運動の継続性短時間,突発的ある程度断続的(数十?数百年に一度)断続的(5?20年に1回程度)断続的(1?5年に1回程度)すべり面の形状平面すべり(椅子型)平面すべり(頭部と末端はやや円弧状)円弧と直線状,末端が流動化頭部が円弧状だが大部分は流動状ブロック化大抵1ブロック末端,側面に2次的地すべり頭部がいくつかに分割され2?3ブロックになる全体が多くのブロックに分かれ,相互に関連しあって運動予知の難易非常に困難,綿密な踏査と精査を必要とする1/3,000?1/5,000地形図で予知できるし,航空写真の利用も可1/5,000?1/10,000地形図でも確認できる地元での聞込みも有用地元での聞込みによって予知できるし,非常に容易に確認できる一般的な斜面形一般に台地部があるが不明瞭である凸型斜面に多く,鞍部から発生する明瞭な段落ち,帯状の陥没地と台地を有す大きくみれば凹型だが主要部は凸型滑落崖を形成し,その下に沼,湿地等の凹地があり,頭部にいくつかの残丘あり,凹型斜面に多い頭部に不明瞭な台地を残し,大部分は一様な緩斜面,沢状の斜面である主な原因大規模な土工,斜面の一部の水没,地震,強雨集中豪雨,異常な融雪や海岸欠潰,地震,中規模の土工その他融雪,台風,集中豪雨,土工など長雨,融雪,河川浸食,積雪,小規模な土工主な地質と構造断層,破砕帯の影響を受けるものが多い結晶片岩地帯,新第三紀層に広く分布する断層,破砕帯の影響あり結晶片岩地帯,中・古生層新第三紀層に広く分布する新第三紀層に最も多く破砕帯沿いにも一部見られる 表6.15 地すべりの危険区分(日本道路公団,1998,p3-19) 表6.16 危険度区分に応じた調査設計施工区分(日本道路公団,1998,p3-19) 調査設計施工危険度区分概略検討詳細結成 1)調 査 2)設 計3)調 査 4)設 計  施 工危険度特A避けるのを原則とするが、不可能な場合危険度Aに準ずる危険度Aに準ずる危険度Aに準ずる危険度Aに準ずる危険度A現地踏査を十分に行いボーリング調査等必要に応じ行う概略の安定計算抑止工,抑制工の検討現地踏査,地質・土質調査,地下水調査,計測調査等・抑止工,抑制工の詳細設計及び施工・胴体観測による追跡調査危険度B危険度Aに準ずる抑制工の検討危険度Aに準ずるが計測調査などの場合によって低減できる・胴体観測による施工管理・排水施設(水抜きボーリング等)の設計施工・必要に応じボーリング等の地質調査による検討(注2)危険度C現地踏査を主体とする排水処理の検討現地踏査・目視点検を主体とした施工管理・排水施設の(地表水処理,暗渠等)の設計施工(注2)必要に応じて安定計算を行う. 表6.17 変動種別の判定表(日本道路公団,1998,p参3-25)伸縮計による地盤伸縮の程度変動種別日変位量(mm)累積変位量(mm/月)一定方向への累積傾向変動形態・引張り・圧 縮・断 続活動性等変 動 A1mm以上10mm以上顕 著引 張 り活発に活動中,表層・深層すべり変 動 B0.0?1mm2?10mmやや顕著引張り,及び断続変動緩慢に運動中,粘質土・崩積土すべり変 動 C0.02?0.1mm0.5?2mmややあり引張り,及び圧縮継続観測が必要変 動 D0.1mm以上なし(断続変動)な し規則性なし局部的な地盤変動,その他傾斜変動の程度変動種別日平均変動量(秒)累積変位量(秒/月)傾斜量の累積傾向の有無傾斜運動方向と地形との相関性活動性等変 動 A5秒以上100秒以上顕 著あ  り活発に運動中変 動 B1?5秒30?100秒やや顕著あ  り緩慢に運動中変 動 C1秒以下30秒以下ややありあ  り継続手観測が必要変 動 D3秒以上なし(断続変動)ややありな  し局部的な地盤変動,その他ひずみ変動の程度変動種別累積変動量(μ)変動形態すべり面存在の地形・地質的可能性活動性等 累積傾向累積変動 変 動 A5,000μ以上顕 著累積変動あ  り顕著に活動している岩盤?崩積土時すべり変 動 B1,000μ以上やや顕著累積変動あ  り緩慢に活動している地すべり変 動 C100μ以上ややあり累 積断 続かく乱回 帰あ  りすべり面の存在有無を断定できないため,継続観測が必要変 動 D1,000μ以上(短期間)な し断 続かく乱回 帰な  しすべり面なし地すべり以外の要因 表6.18 地すべり区分に応じた現状安全率分類運動岩盤地すべり風化岩地すべり崩積土地すべり粘質土地すべり運動停止中1.101.05?1.101.03?1.051.00?1.03滑動中0.990.95?0.990.93?0.950.90?0.93注)目標安全率は基本的には,1.20である.しかし,抑止力が膨大になる場合には,考え方を整理して現実的な安全率とする.例えば,現状安全率をした間笑い程度の対策工とするなどである.図6.26 トンネル坑口の地すべり対策の例(北海道赤岩トンネル)蛇紋岩を含む泥岩中に設けられた坑口で,地下水排除工(集水井),押え盛土,抑止杭を施工する予定である.安定解析は疑似三次元(板垣の方法)とホフランド法(三次元)により行い,万全を期した.また,三次元表示により対策工相互で支障がないようチェックを行った. 62 1 4